今回の記事は、美容師にとって、とても重要な話なので、施術のたびに頭の片隅に置いてもらいたいと思っています。
若いアシスタントに、技術を教える時に、一番難しいと感じるのが、トリートメントについてです。
むしろ、アシスタントだけじゃなく、ベテランのスタイリストに、施術の説明をする時でさえも、難しさを感じてしまいます。
「??」
多くの美容師から、「意味が分からない…」という声が聞こえてきそうですが(^_^;)
結論から言うと、
縮毛矯正に限らず、カラーやパーマを施術するときの多くの失敗に関わっているのが、前処理のトリートメントです。
しかし、メインの施術である縮毛矯正やカラー、パーマが、失敗のスケープゴート(生け贄)にされてしまっているのです。
きっちり、丁寧に仕事をこなしているのに、なぜか、失敗してしまう人が、お客様から喜ばれるような施術をする為の、前処理トリートメントの仕方を紹介したいと思います。
なぜ、縮毛矯正やカラー、パーマは失敗するのか?
縮毛矯正やカラーの失敗とは何でしょうか?
- クセが伸びていない
- ヘアカラーがムラに染まってしまった
- 髪の毛先がダメージで、チリチリに縮れてしまった
- 根元だけが明るくなって、毛先の色味が暗くなってしまった
などなど、いろいろな失敗があると思います。
原因としては、
- 薬剤の選定を間違えてしまった(強すぎた、弱すぎたなど)
- 薬剤の塗り方が均一ではなかった
- 髪の状態の判断を見誤った
- 時間を置きすぎてしまった(早すぎた)
などがあります。
実際、このように書き出してみると、失敗の傾向が見えてきますよ。
失敗する人の多くは、同じところで失敗してしまうので、サロン内でこのようなワークショップを行うと、失敗が改善できるかもしれませんね(*^_^*)
話がそれてしまいましたが、もう1点失敗の原因があります。
それは、前処理のトリートメントです。
なぜ、髪をきれいにするためのトリートメントが失敗の原因になってしまうのでしょうか?
美容室にとって、トリートメントとは?
お客様にとって、トリートメントとは、髪をきれいにするものだと思います。
美容室によっては、トリートメントの料金は様々です。
前処理でする簡単なトリートメントから、1時間以上もたっぷり時間をとって、髪をきれいにしていく、ラグジュアリーなトリートメントまで、500円~1万円以上するものまであります。
それだけ、髪をきれいにすることは、お客様にとって、価値のあるものなんですよ。
トリートメント=髪をきれいにしますよ! っていう事の意思表示なんですね。
では、美容室にとって、トリートメントとは何でしょうか? 少し考えてみて下さいね!
…
…
…
考えましたか?
僕は、料理で言うところの、調味料のようなものだと感じています。
もう少し、噛み砕いて説明していきたいと思います。
美容室で、若いアシスタントが、トリートメントをする時によく見る光景のひとつに、ドバドバ、トリートメントをつけまくっていることがあります。
髪が傷んで、引っかかるので、とりあえず、トリートメントをいっぱいつけたら、指通りが良くなってきたので、いっぱいつけてみた…。
のような感じですかね(^_^;)
違う場面では、パーマをかけたいんだけど、毛先が痛んでいるから、しっかりと補修効果の高い前処理トリートメントをつけてから、パーマをかけてみた…。
たぶん、多くの美容室では、上記のようなことになっていると思いますが、実は、失敗例です。
料理をする時に、おいしくするためには、塩などの調味料は多ければ多いほど良いのでしょうか?
味付けがいまいちのときに、味の強い調味料で、ごまかすことは出来るでしょうか?
「…」
やはり、バランスが大事ですよね!
トリートメントもバランスが重要です。
パーマ液の作用を生かす、カラー剤の作用が100%発揮できるような髪の状態に、前処理のトリートメントで整えることが重要です。
補修効果が高すぎて、薬剤の作用が妨げられてしまっては、トリートメントと言えど、失敗の原因になってしまいます。
実は、トリートメントは一番難しい!
トリートメントって、簡単だと思っていませんか?
美容室に入社して、すぐに任せられる施術のひとつにトリートメントが挙げられます。
塗って、加温して、流せば、だいたい終わりです。(いろんなタイプがありますが…)
ほとんどのトリートメントで、指通りが良くなりますし、ツヤが出て、髪のまとまりが良くなります。
でも、仕上がりの手触りや髪の質感などは、担当する人によって、結構違いがあるのは気づいていますか?
パーマやヘアカラーをする時の前処理のトリートメントでは、担当する人が違うと、パーマのかかり方やヘアカラーの色持ちや色の均一さに、大きく違いが出ることもあります。
それなのに、パーマやカラーの薬剤の選定ミスだと思ってしまったり、塗り方や時間のミスだと思ってしまっている美容師も多く見られます。
トリートメントは、ヘアカラーやパーマのような変化が起こらないので、失敗していることに気付かないのです。
何となく、「こういうものだろう…」と思っている美容師が多いですが、トリートメントこそ、種類が多く、様々な特長を持っているものが、多く存在しています。
これらのトリートメントの違いを認識することは、とても難しいのですが、知らないと、パーマやヘアカラーでの失敗の原因になってしまうのです。
薬剤には、相性がある
水と油は、混ざらないですよね?
トリートメントと言っても、いろいろなタイプがあることは知っていますか?
水のような液体のトリートメントもありますし、オイルタイプの流さないトリートメントや、乳液状のクリームタイプのようなものまで、様々なタイプのトリートメントがあります。
また、美容室で使うカラー剤は、クリームタイプが多いと思いますが、市販で売られている泡状のカラー剤は、クリームというよりは、水に近いものになります。
では、パーマ液はどうでしょうか?
通常の水っぽいものから、トリートメントが多く含まれているものでは、やや乳液状な質感ですし、縮毛矯正で使われるパーマ液などは、かなり粘度の高いクリーム状のものまであります。
トリートメント、カラー剤、パーマ液の3種類それぞれの中でも、水状のものから、オイルタイプやクリーム状のものまで、幅広くそろっています。
ここで、はじめに戻りますが、水と油は、混ざらないですよね?
同じトリートメントでも、水っぽいものと、油っぽいものだと、基本的には混ざりにくくなります。
厳密にいうと、界面活性剤が入っているので、全く混ざらないことはないのですが、僕たち美容師が目に見えないレベルで、馴染みやすい薬剤があったり、効果を阻害してしまうくらい反発してしまう薬剤もあるんですね。
髪を傷ませないように、前処理のトリートメントをしてしまったがゆえに、パーマ液が浸透しなくなることもあります。
また、カラー剤の発色を良くしようと思って、傷んでいる髪に対して前処理のトリートメントを塗らなかったら、カラー剤の発色が悪くなったりすることもあります。
『髪の状態や髪質』『トリートメントの性質』『パーマ液やカラー剤の性質』を見極め、相性のいい薬剤を組み合わせていかなければ、どんなに高価な薬剤を使っても、美容師が意図した様な、ヘアデザインにすることは、難しいのです。
サロンワークにこだわれ!経験がものをいう
これまで、話してきた内容は、通常のサロンワークをする上では、あまり馴染みのないものかもしれません。
少し化学的な話なので、見た目やデザインを重視する「美容師」という職種の方からすると、少し苦手な部分かもしれません。
ただ、見た目やデザインを生かすためには、このような「毛髪化学」や「薬剤の特性」などのような「基礎知識」はとても重要になります。
みなさんのまわりに、小さいころから「秀才」と言われるような教育を続けている友人はいますか?
僕の年齢は、40歳近くなので、かなり結果として現れてきていますが、勉強の努力を続けていた友人のほうが、社会的な地位が高かったり、人間的に成長していることが多いです。
会社で重要なポジションについていたり、余裕のある生活を送っていて、人生を楽しんでいる友人が多くいます。
反対に、遊びや自分のやりたいことを優先させて、勉強してこなかったり、学生時代に重要なポジションから、敬遠しているような友人は、なかなか思い通りの人生を過ごせず、苦労している人が多い気がします。
これまで、話してきたような【基礎的な知識】はとても重要なんですが、「知識」だけを詰め込んでも、上手くいかないのも事実です。
髪の状態は、人によって様々な違いがあります。また、カラーをしたり、パーマをしたりすると、同じ人でも、様々な髪の状態になります。
だから、髪への薬剤の使い方や対応においても、無限の対応の仕方があります。
このような技術を身につけるには、多くの施術を実際にこなしていくしかありません。
正しい基礎知識を身につけた上で、実際のサロンワークで、試行錯誤を繰り返すしかありません。
サロンワークで、「どうしたら、お客さんが喜んでくれるんだろう?」とこだわりを持って、仕事をしていくことで、どんな髪でも対応できる技術が、少しずつ身についていきますよ。
反省会は重要だよ
いろんな美容室で働いた経験がありますが、売り上げが上がったり、お客様が喜んでくれる美容室と、仕事は忙しくても、美容室の雰囲気が悪かったり、だんだんお客様からの評価が悪くなって売り上げの下がっていく美容室があります。
「何が違うんだろう?」と考えながら、自分の美容室でも、こういった経験を活かしながら、美容室の運営をしてきましたが、『自分たちと向き合う作業』をしているか、していないかという事は、とても大きな違いなんじゃないかと感じています。
上記の「サロンワークにこだわれ!」のパートでも話していますが、試行錯誤を繰り返す際に、施術を振り返ったり、お客様への対応を振り返ることをしなければ、成長は出来ません。
最近は、書籍などにも書かれていることもあってか、「ポジティブ信仰」が過剰なような気がします。
ポジティブを保つためなのか、失敗や間違いから、目を背ける行為が多く見受けられますが、これでは、いつまでたっても、成長は出来ないですよね?
なぜ、ポジティブでなければいけないのでしょうか?
それは、成果を上げるためですよね?
ポジティブな気持ちを保つことで、なかなか行動が起こせない人でも、チャレンジしやすくなり、経験を積み、成長し、成果を挙げることが出来るようになります。
ただし、『間違ったポジティブ信仰』が身についている人は、現実から目を背けてしまうため、結果的に、自分たちの求める成果を上げることが出来なくなっているように感じます。
本当のポジティブシンキングとは、失敗や上手くいかないことがあっても、前に進む道を探す力や考え方が出来ることなんではないでしょうか?
僕は、定期的な『反省会』をおすすめします。
はじめは、失敗例や間違いを指摘されることに、傷ついたり、イラっとすることもあるかもしれません。
しかし、慣れてくると、それが当たり前になってくるので、失敗しても、「次にどうすればいいか?」と切り替える力が身についてきますよ。
そして、重要なのが、話し合う際に、相手を傷つける為に、意見を言うんじゃなくて、「相手の価値を高めるため」という意識をもって、反省会が出来るようになることが重要なポイントです。
まとめ
今回の話はいかがでしたか?
トリートメントや薬剤の勉強は、理科や化学のような感じで、とても地味だし、美容師さんには苦手な分野かもしれませんね。
トリートメントを勉強することは、素材である髪のことを勉強することにもなります。カラー剤やパーマ液のように、劇的に反応するわけじゃないので、髪の特徴がわかっていないと、髪が綺麗にならないからです。
カットやカラー、パーマなどの練習などは、わかりやすいし、取り組みやすいです。しかし、髪の本質的なことがわかっていないと、どんなに技術力が上がっても、思ったような結果にはなりません。
そして、髪のことがわかるようになれば、カラーやパーマで、失敗する確率も少なくなってくるし、思い通りの施術をすることが出来るようになってきます。
はじめは、大変ですが、しっかりと基礎の髪の構造についての勉強から始めましょうね!
その方が、成功するスタイリストになる為には、ずっと近道にもなるし、お客さんへの説明もわかりやすく話すことが出来るようになりますよ。
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